図書館の神様

図書館の神様(瀬尾まい子)読了。
かかった時間2時間。
かけたお金、0円。(図書館で借りたから)
手にした感想 プライスレス。

こんばんわ。キャップです。
すらすらすらすらと読んでしまえる少女漫画っぽい小説という意味で、ほんとまっとうな吉本ばななイズムを感じさせる良書でありました。
とてもいい小説。
吉本ばななイズムというのは語りだすと長くなるのでここでは適当にお茶を濁したいところですが。

まあ、極論で言うなら、平易なひらがな語をきれいな形容詞と組み合わせてシンプルに語ることで、乙女(もしくはそれに準ずるもの)の繊細な感情、感傷を結果的に抽象的に表すことだと、勝手に理解してください。
ちなみに、この手法は非常に少女漫画のナレーションと近いということも、チェックしておいて損はないでしょう。

で、これは吉本ばななの大発明であると同時に、罪な発明でもあって、これ以降、まんがしか読んでなくても文学できちゃうなんて勘違い少女が多々あらわれちゃって、ただ、案外、その中から、ほんとにできちゃったりする娘もいたからますます文学は先細って、あげくJ文学ってなださい名前を付けられたりしちゃったわけで・・・と語り出すとまあ小一時間はつぶせるのですが、今回は割愛。

本題。この瀬尾まい子って作家さんは、今も現役で国語の講師らしいんです。で、作家デビューをはたした後も教員採用試験を受け続けていて、とにかくまずは先生になりたいんだと、そういうすてきな講師さんらしくて。
その地に足ついた感、まっとうな人生を歩む人間の健全さはたぶんすごくでっかく、この本の魅力に貢献しているのだろうと思います。
そこが他の吉本ばななイズムの女子作家との違いかと。

個人的に思うのですが、吉本ばななイズムの継承者ってのは実はなかなかにやっかいで、作家緒として成熟して、吉本ばななから離れていこうとする過程において、どんどん男子をおいていってしまう傾向にある気がします。
例えば、気持ち悪いくらいに恋愛に魂を焦がして、最終的には分身、黒木瞳に「もうだんなを愛せない」とまで言わせてしまった江国香織

例えば、女性のいやな部分をこれでもかとえぐる事に快感を見いだしていった山本文緒

例えば、幽玄の世界の果てに、じいさまとの恋愛に目覚めてしまった川上 弘美
てか、本家の吉本ばななですら、初期の自分から離れていくにつれ、オカルトと不可思議なナチュラル思想に走ったし。

ここにもまた何かしら因果のかほりがするのですが、これまた今回は思考停止。

とにかく、そういう風にみんながみんな、いつのまにか吉本ばななイズムが進行するにつれ、なぜか男性を置き去りにしてしまったのと比べると、この瀬尾さんは、なんだかこれからもずっとまっとうに男性も読める形で、少女漫画を文学化してくれるような、そんな健全さを感じるのであります。
十年後、二十年後も、きっと図書館で雨の日に読むのが似合うような、そんなまっとうな健全さを持った本を書いてくれるような気がするのです。
それはきっと、彼女が、本の世界の他に、生きている場所があるからで、彼女が本にふれるのは、本屋さんでも出版社でもなく、まず図書館だからなんでしょう。
まあ、その分、ちっと落ち着きすぎているきらいはなきにしもあらずなんだけども、それも魅力的っちゃ魅力的。

要約すると、同じ小説好きな女の子でも、「わたし小説書いてるの」と恥ずかしげもなく行っちゃう女と、「本は好きだけど、書くなんてとんでもないです」って言う女の子じゃあ、圧倒的に後者の方がかわいいということ。
ま、後者も結局隠れて書いちゃってんだけどさ。